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ノース・ウエスト航空事件 事件の概要

労働組合が、要求の貫徹を目指してストライキを決行しました。

ストライキにより、会社は業務の一部を停止せざるを得ない状態になり、一部の従業員の就労が不要になったため、その労働組合に所属していない従業員に休業を命じました。

その後、会社は休業した期間に対して賃金を支払いませんでした。

それに対して、休業を命じられた従業員が、会社の責任で休業したものと主張して、民法第536条第2項に基づいて、賃金の支払いを請求しました。

また、賃金の全額の支払いが認められないとしても、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」に該当するものとして、休業手当の支払いを求めて、会社を提訴しました。

ノース・ウエスト航空事件 判決の概要

ストライキが原因で、ストライキに参加しなかった従業員が勤務できなかったり、出勤をしても無価値になったりして、労働義務を履行できなかった場合に、従業員が賃金を請求できるかどうかについては、個別の労働契約上の危険負担の問題として考察すべきである。

ストライキは労働者に保障された争議権の行使であって、会社がこれに介入することはできず、また、団体交渉において労働組合にどのような回答をし、どの程度譲歩するかは会社の自由であるから、団体交渉が決裂した結果、ストライキに突入したとしても、そのことは会社の責に帰すべきものとは言えない。

したがって、ストライキが原因で、ストライキに参加しなかった従業員が労働義務を履行できなくなった場合は、会社が不当労働行為の意思その他不当な目的をもってストライキを行わせたといった特別な事情がない限り、そのストライキは民法第536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」には当たらず、従業員は賃金を請求することができない。

ところで、労働基準法第26条において、「使用者の責に帰すべき事由」により休業させた場合は、平均賃金の6割以上の休業手当を支払うことを義務付け、それを会社に強制する手段として、付加金の支払い(労働基準法第114条)罰金(労働基準法第120条1号)の制度が設けられている。

これは、「使用者の責に帰すべき事由」による休業については、会社の責任で、従業員の生活を保障させようとする趣旨であって、同条項が民法第536条2項の適用を排除するものではない。

また、その休業の原因が、民法第536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」に該当し、従業員が会社に対する賃金請求権を失わない場合は、賃金請求権と休業手当請求権は競合しうるものであり、両者が競合した場合は、従業員は賃金額の範囲内においていずれの請求権も行使することができる。

そこで、労働基準法第26条の「会社の責に帰すべき事由」と民法第536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」の異なっている点、範囲の違いが問題となる。

休業手当は、従業員の生活保障という観点から設けられた制度ではあるが、会社に帰責事由がある場合に支払を義務付けていることから、会社の立場を考慮すべきであることは明らかである。

そうすると、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」の解釈適用に当たっては、従業員の生活を保障するために、どのような事由による休業の場合に、会社に負担を要求するのが社会的に正当とされるのか考量しなければならない。

このように見ると、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由」とは、取引における一般的な原則である過失責任主義とは異なる観点も踏まえた概念と言うべきであって、民法第536条2項の「債権者ノ責ニ帰スヘキ事由」よりも広く、会社側に起因する経営、管理上の障害を含むものと考えられる。

そこで、本件ストライキは、労働組合が自らの主体的判断とその責任に基づいて行ったものであって、会社に起因するものではない。また、本件ストライキにより、就労が不要となったのであるから、その間、従業員が労働をすることは無価値になったと言える。

そうすると、会社が従業員に命じた休業は、会社側に起因する経営、管理上の障害によるものとは言えないから、「使用者の責に帰すべき事由」によると言うこともできない。したがって、従業員は、会社に対して休業手当を請求することはできない。

解説−休業手当

ストライキの影響で組合員でない従業員が休業を命じられたときに、休業手当を請求できるかどうか、また、労働基準法で定められている休業手当の請求権と、民法で定められている賃金の請求権にどのような違いがあるのか、について争われた裁判例です。

労働基準法の休業手当の制度は、従業員の生活を保障するために設けられた規定で、その支給額が平均賃金の6割以上とされていることから、休業手当の支払いが求められる「使用者の責に帰すべき事由」は、民法第536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」より広く、会社側に起因する経営、管理上の障害を含むことが示されました。

また、この裁判でのストライキは、労働組合の主体的判断とその責任に基づいて行われたものとして、会社に起因するものではない、つまり、会社は休業手当を支払う義務はないと判断されました。

会社が労働組合にストライキを行うよう仕向けて、組合員でない従業員に休業を命じたような場合は、休業手当の支払いが義務付けられるかもしれません。