有給休暇の付与【エス・ウント・エー事件】

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エス・ウント・エー事件 事件の概要

就業規則を変更して、日曜日を「休日」、祝日、出勤日以外の土曜日、年末年始を「一般休暇日」として、この「一般休暇日」を、年次有給休暇の付与の基準となる全労働日に含めることにしました。

そして、変更した就業規則に基づいて計算したところ、前年度の出勤率が全労働日の8割に満たなかったものとして、会社は従業員に年次有給休暇を付与しませんでした。

このため、会社は、従業員が請求した年次有給休暇の取得を認めないで、欠勤扱いとして賃金を控除しました。また、賞与の支給額を決定する際も、これを欠勤扱いとして、賞与を減額しました。

これに対して、従業員が、就業規則は労働基準法第39条に違反し無効であると主張して、未払い賃金の支払いを求めて訴訟を提起しました。

エス・ウント・エー事件 判決の概要

労働基準法第39条第1項にいう全労働日とは、1年の総暦日数のうち、従業員に対して労働義務が課せられている日数をいう。

しかし、就業規則に定める「一般休暇日」は、従業員に対して労働義務が課せられていない日である。

したがって、就業規則において、「一般休暇日」を全労働日に含めるものとして、年次有給休暇の成立要件を定めている部分は、労働基準法第39条第1項に違反し無効である。

また、年次有給休暇を取得した日について、会社に一定の賃金の支払を義務付けている労働基準法第39条第7項の規定の趣旨からすれば、会社は賞与の計算に当たって、これを欠勤した日と同様に扱うことはできない。

したがって、就業規則の年次有給休暇の成立要件を定めている部分は無効であるから、会社は年次有給休暇を取得したものとして、未払賃金を支払わなければならない。

解説−有給休暇の付与

労働基準法第39条第1項の出勤率を計算する際の「全労働日」とは、1年の総暦日数のうち、従業員に労働義務が課せられている日数であることが示されました。

年次有給休暇を付与する要件として、前年度の出勤率が全労働日の8割以上であることが定められています。この労働基準法の規定は、出勤率が低い、勤務成績が悪い者を除外するためと考えられています。

勤務成績が良好な者には年次有給休暇を与えるという趣旨に沿った判断です。

また、賞与の支給額を決定する際に、年次有給休暇を取得した日を欠勤したものとして減額していたことについては、労働基準法第39条第7項で、年次有給休暇を取得した日に対して一定の賃金の支払を義務付けていることから、許されないと判断しています。

従業員が年次有給休暇を取得して、その後に賞与の減額が認められるとすると、結果的に、「有給」であることの意味がなくなってしまいます。これも、労働基準法の規定の趣旨に基づいた判断です。