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三菱重工業長崎造船所事件 事件の概要

労働基準法に年次有給休暇の計画的付与の制度が新設されたことに伴って、年次有給休暇の取得を促進するために、会社は、2日間を年次有給休暇の計画的付与にしようと、労働組合と団体交渉を行いました。

従業員の約98%が加入する多数組合とは合意に至ったのですが、少数組合とは合意に至りませんでした。

そして、多数組合と年次有給休暇の計画的付与に関する労使協定を締結して、就業規則にも計画的付与に関する規定を設けて、反対する少数組合の従業員も対象にして、年次有給休暇の計画的付与を実施しました。

なお、従業員の約3割は計画的付与の適用が除外され、年次有給休暇の取得率は計画的付与を実施する前より低下することになりました。

そこで、少数組合の従業員は、そのような労使協定は労働基準法の趣旨に反するもので無効、無効でないとしても年次有給休暇の取得には従業員の個別合意が必要で、合意していない従業員は拘束されないと主張して、計画的付与がなかったものとして年次有給休暇の残存日数の確認を請求しました。

三菱重工業長崎造船所事件 判決の概要

年次有給休暇の計画的付与は、これに反対する従業員も拘束して、集団的統一的な取扱いをすることによって、年次有給休暇の計画的な取得を促進しようとするものである。

一旦、労使協定によって、年次有給休暇の取得時季が集団的統一的に特定されると、その日については、個々の従業員の時季指定権及び会社の時季変更権は共に排除され、その効果は、労使協定で適用対象とされた全ての従業員に及ぶ。

労働基準法が、労使協定による年次有給休暇の計画的付与を定めたのは、労働組合と会社の協議を経ることによって、それぞれの会社の実情に応じた適切な労使協定が定められることを期待してのことである。

そして、その労使協定の締結に至る手続の公正さや内容的な合理性は、法定の要件に反しない限り、原則としては、労働組合と会社の協議に委ねられる。

したがって、計画的付与が、年次有給休暇の取得率の向上という労働基準法の趣旨に沿っていないとしても、そのことのみによって年次有給休暇の計画的付与の効力が左右されることはない。

ただし、これに反対する労働組合がある場合は、その組合員に適用することで著しく不合理となる特別な事情が認められる場合や、労使協定の内容自体が著しく不公正で年次有給休暇の計画的付与制度の趣旨を没却するような場合には、計画的付与の効果は及ばないと考えられる。

しかし、本件においては、反対する組合員に計画的付与の制度を適用しても、著しく不合理、著しく不公正ということはできない。

解説−有給休暇の計画付与

年次有給休暇の取得率を向上させるために、労働基準法において、計画的付与の制度が設けられています。

計画的付与の制度により、労使協定で年次有給休暇の取得時季を特定したときは、これに反対する従業員も含めて効力が及ぶことが、この裁判で示されました。

ただし、計画的付与をすることによって、著しく不合理、著しく不公正となる場合は、例外的に拘束されないものとしています。

また、労使協定は、会社と過半数代表者(過半数組合)が自主的かつ対等な立場で協議をしているものとして、手続の公正さや内容の合理性については労使協議に委ねて、法定の要件を満たしていれば十分と判断しています。