なるほど労働基準法 > 有給休暇 > 有給休暇の取得に対する不利益取扱いの禁止

沼津交通事件 事件の概要

会社では出勤率を高めるために、皆勤手当を支給していました。

この皆勤手当は、欠勤が1日あったときは半分に減額して、欠勤が2日以上あったときは支給しないことになっていました。

皆勤手当の支給においては、年次有給休暇を取得した場合も、欠勤と同様に取扱い、減額の対象になっていました。

なお、給与月額に対する皆勤手当の割合は、最大でも1.85%でした。

従業員が、このような取扱いは労働基準法第39条、第136条に違反するもので無効と主張して、不支給分の皆勤手当の支払いを求めて提訴しました。

沼津交通事件 判決の概要

労働基準法第136条が、「有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない」と規定していることから、年次有給休暇の取得と経済的不利益を結び付けることは、できるだけ避けるべきである。

出勤率の低下を防止するというような、経営上の合理性が認められる場合であっても同じである。

しかし、この労働基準法の規定は、会社の努力義務を定めたものであって、年次有給休暇の取得に対して、会社が不利益な取扱いをしたとしても、その取扱いを無効とするまでの効力はない。

一方、このような取扱いは、年次有給休暇を保障する労働基準法第39条の趣旨に反するもので、その取扱いの趣旨、目的、従業員の経済的不利益の程度などの事情を総合して、年次有給休暇の取得を抑制し、年次有給休暇の権利を実質的に失わせるものと認められる場合は無効となる。

本件については、会社はタクシー業者で、経営は運賃収入に依存しているため、自動車を効率的に運行させる必要性が大きい。

また、交番表が作成された後に、従業員が年次有給休暇を取得すると代替要員の手配が困難になることから、年次有給休暇を取得しなかった従業員に皆勤手当を支給することにしたものと考えられる。

この皆勤手当の取扱いは、年次有給休暇の取得を抑制することが趣旨ではなく、また、従業員が年次有給休暇を取得したことにより控除される金額が相対的に小さいことから、年次有給休暇の取得を抑止する力は大きなものではなかった。

以上により、年次有給休暇の取得を理由に皆勤手当を控除する取扱いは、労働基準法第39条、第136条の趣旨に照らすと望ましいものではないが、従業員の年次有給休暇の権利の行使を抑制し、年次有給休暇の権利を実質的に失わせるものとまでは認められない。

したがって、会社の皆勤手当の取扱いは、公序に反する無効なものとは言えない。

解説−有給休暇の取得に対する不利益取扱いの禁止

年次有給休暇を取得したときに、皆勤手当を減額できるかどうか、が争われた裁判です。

年次有給休暇の取得に対して不利益な取扱いをしないようにしなければならないという労働基準法第136条の規定は、附則で定められ、罰則もありません。そのため、会社の努力義務を定めたものと解釈されています。

ただし、労働基準法第39条で年次有給休暇を取得できることが保障されているため、年次有給休暇に関する不利益な取扱いについては、その趣旨、目的、従業員の経済的不利益の程度などを総合して、年次有給休暇の権利の行使を抑制する場合は無効になることが示されました。

要するに、不利益な取扱いによって年次有給休暇の取得を抑制するかどうかで、結局は、不利益の程度の大きさによって決まることになります。

この裁判のように不利益の程度が小さければ認められますが、年次有給休暇の取得に対しては、小さくても不利益を与えることは望ましいことではありません。

会社にとっての利益は僅かなものですが、従業員の不信感は大きなものになります。