労働者の定義【大平製紙事件】

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大平製紙事件 事件の概要

塗装機械に用いる塗料に関する技術指導と塗料の研究をすることを求められて、嘱託として従事していました。

その後、会社が嘱託に対して解雇の意思表示をしました。

これに対して、嘱託が、雇用関係が存在することの確認を求めて会社を提訴しました。

大平製紙事件 判決の概要

嘱託の職務内容は、会社において塗装機械に用いる塗料の製法の指導及び塗料の研究であり、一般従業員とは異なっていた。

また、直接加工部長の指揮命令を受けることがなく、部長の相談役というべき立場にあって、遅刻や早退をしても給与が減額されることはなかった。

しかし、週6日、朝9時から夕方4時まで勤務をし、毎月一定の本給の他に、時給の2割5分増の割合で計算した残業手当の支払を受けていた。

したがって、本件嘱託契約は雇用契約(労働契約)であって、嘱託は労働法の適用を受ける労働者である。

解説−労働者の定義

「嘱託」として勤務している者について、労働者(労働契約)かどうか争われた裁判例です。

この嘱託は、直接上司の指揮命令を受けていなかったり、遅刻や早退をしても賃金が減額されなかったり、会社の一般従業員とは異なる待遇を受けていたのですが、毎日一定の時間に会社に出勤をして、残業をしたときは残業手当が支払われていたことから、労働法の適用を受ける労働者と判断されました。

「嘱託」というと、今では、「定年退職後に再雇用された者」と一般的に認識されていると思います。

しかし、「嘱託」という文字だけを見ると、委嘱や委託が連想されて、雇用契約や労働契約とは考えにくいかもしれません。もし、委嘱や委託の契約とすると、労働法の保護を受けることはありませんので、契約は自由に打ち切ることができます。

名目や形式がどのようになっていたとしても、労働法においては実態が重視されます。この裁判では、実態が労働者であったことから、そのように判断されました。