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芝信用金庫事件 事件の概要

この会社では職能資格制度を導入して、副参事や主事などの資格を定めていました。

そして、課長や係長といった職位は、一定の資格を持った者の中から任命することになっていました。

そして、男性従業員については、入社して13年から16年でほぼ全員が係長(主事の資格に対応)に昇進していました。

これに対して、女性従業員で係長に昇進したのは9名だけで、係長に昇進すまでに、入社して12年から36年を要していました。

また、男性従業員は係長に昇進した後、平均して4年から5年で、ほぼ全員が副参事(課長の職位に対応)に昇格しているのに対して、女性従業員で副参事に昇格したのは1名だけでした。

主事になった女性従業員が、副参事への昇格試験を何度か受験したのですが、不合格になっていました。一方で、一部の男性従業員に対して、例外的に昇格試験を省略して、副参事に昇格させていました。

そこで、女性従業員が、昇格について、女性であることを理由に差別的な取扱いを受けたとして、副参事の資格があることの確認と、最も遅く昇格した男性従業員と同時に昇格したものとして、支給されるはずだった賃金と実際に支払われた賃金との差額の支払を求めて提訴しました。

芝信用金庫事件 判決の概要

係長になった男性従業員のほぼ全員が副参事に昇格しているにもかかわらず、女性従業員のほぼ全員が副参事に昇格していないのは極めて特異な現象である。

また、昇格試験を省略して男性従業員を副参事に昇格させるといった事実等を考慮すると、男性従業員に対してのみ、人事考課に関して優遇していたものと認められる。

そのため、女性従業員がそのような差別を受けることなく、人事考課に関して男性従業員と同様の優遇を受けていれば、女性従業員も昇格できたと認められる。

そして、職能資格制度においては、資格の付与が賃金額の増加に連動しており、資格の付与における差別は賃金の差別と同様に考えることができる。

女性従業員にも男性従業員と同様の措置を講じることによって、副参事への昇格試験に合格していると認められるにもかかわらず、会社が昇格させないという行為は、労働基準法第3条、第4条の規定に違反し無効である。

したがって、労働基準法第3条、第4条、第13条の規定を類推適用することによって、従業員は副参事の資格を有する。

また、女子従業員に対する差別によって、本来昇格できた時期に昇格できなかったのであるから、昇格していたものとして支給される賃金と、実際に支払われた賃金との差額を請求することができる。

解説−男女の昇進差別

これまで女性差別に関する裁判については、女性差別を認めて、「男女同一賃金の原則」を定めた労働基準法第4条により、賃金の差額の支払いを命じたケースはいくつかありました。

しかし、昇格や昇進については、会社の経営判断に基づくもので、会社に大きな裁量があると考えられていたため、昇格まで認めたケースはありませんでした。

このケースでは、「均等待遇」を定めた労働基準法第3条「男女同一賃金の原則」を定めた労働基準法第4条「労働基準法違反の契約」を定めた労働基準法第13条により、副参事の資格があることを認めました。

この会社では職能資格制度を採用していて、資格(副参事や主事など)と職位(課長や係長など)が分離していたことが大きく影響したものと考えられます。